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訪問看護ステーションととのえ

花・鳥・風・月と「花鳥風月」

 



花鳥風月とは「自然の美しい景色」「自然の風物を題材とした詩歌や絵画などをたしなむ風流」と言われています。花鳥風月という言葉の意味は知っていました。でも私には暫くの間「花鳥風月」では無く、ただの花や鳥、風や月でしかありませんでした。

 私は長らく無風流で無粋な人間だったように思います。仕事に追われ、子育てに追われ、介護に追われながら暮らしている時は、花・鳥・風・月に全く気持ちが向いていませんでした。花や植物を愛でる父や母の気持ちを汲むことが出来ず、季節の変化の話しにも興味を持たず、月を見上げる事もぜず。しかし介護がなくなり、子供が巣立ち、訪問看護を仕事をするようになり、暮らしの中にあった花・鳥・風・月をいつしか感じるようになってきました。ある日ふと、利用者さんのお庭の花の蕾みに気持ちが向き「いつ頃何が咲くのだろう」。また違う日には窓の外にカラスが大きな枝を咥えて歩いているのが見え「どこに持って行くのだろう、何に使うのだろう」。またあるときは畑の芋虫が葉っぱを食べている姿に見入り、蜘蛛の巣に朝露がついている美しさに足を止め、畑の風に身を任せ、夜空を眺めて月の雲隠れを見つめていたり。そんな自分の変化に驚きました。

 今までの自分は何を感じて生きていたのだろう?と不思議に思うばかりです。ただの花・ただの鳥・ただの風・ただの月・・・そう感じていた私が、今となってはすっかり花鳥風月の虜になりました。心が豊かになり、日々の好奇心が刺激されると同時に、それらを感じるようになった自分が着々と年齢を重ね、しかし心が豊かになっていることを強く実感しています。

 このように感じるようになったのは、訪問看護という仕事をしてきたことも大きく影響しているかも知れません。色々な人達の暮らしの中で、「花鳥風月」は療養生活の潤いとなっていることを教えてもらいました。

 今日も私は色々な自然の営みに心を奪われています。

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